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 施工計画書の作成方法



そもそも施工計画書とは

施工計画書とは土木事業や建築工事、電気工事などの工事を行う際に提出する書類のことです。作成にあたっての目的は設計仕様の順守、および施工にあたっての安全の確保を主としています。

施工計画書とは「誰が工事を行い、どのような目的の工事なのか、そしてどんな方法でその工事が行われる予定になっているのか」ということが書かれた書類です。
一般的に施工計画書という名称で呼ばれていますが、その書式や内容の項目は様々です。施工の内容そのものや施工を行う事業者、また施工を依頼した施主や自治体などによって異なります。



施工計画書に関する法令

そもそもなぜ施工計画書が必要なのでしょうか。それは法令によってその作成が義務付けられているからです。施工計画書の提出が施工前に必要だとされている根拠は建設業法の第二十六条の三にあります

建設業法 第二十六条の三
主任技術者及び監理技術者は、工事現場における建設工事を適正に実施するため、該当建設工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理その他技術上の管理及び該当建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督の職務を誠実に行わなければならない。」

施工計画書が必要になる根拠の箇所は「該当建設工事の施工計画の作成」の部分です。安全管理及び品質管理を行うにあたって、責任者(主任技術者及び監理技術者)はあらかじめ計画書を作成するとともに指導監督を行わなければならなりません。
建設業法とは1949年に制定された法律であり、建設工事の完成を請け負う業者に適用される法律です。顧客に対して適切な成果物を納品するために、「適切な施工内容」「発注者に対する保護」「建設業界の健全化の促進」を目的として定められた法律です。その中には「下請けへの不当に安い請負報酬での発注」や「一括下請けの禁止」などの項目もあります。この項目は工事を実際に行う下請け業者が不当に安い金額で発注をすることを防止すると同時に、そうした安い金額で発注することによって成果物の品質が著しく低下し、顧客が不当に被害を受けないようにするための法律でもあります。

建設業法では、安全管理のためまた品質管理のため、該当請負工事の作業期間に現場代理人と主任技術者の専任が義務付けられています。また労働安全衛生法でも安全衛生責任者の専任義務があります。



施工計画書はいつまでに作成するものか

施工計画書はその名称の通り、施工内容の計画を記述するものです。そのため、施工が始まる前には書類が完成していなければなりません。
公的な工事などの場合には確実に作成が求められますので公共事業を請け負う場合や業務請負を行う場合には施工計画書の作成が必要になります。
もちろん計画を記入する書類であるため、施工計画書は実際に工事を行う前に完成させて提出しておく必要があります。一般的には遅くとも工事が始まる日の3週間前までには提出の必要があります。
施工計画書は作成には通常3週間から1か月ほどの期間がかかります。もちろん書類に不備があれば役所から差し戻され、工事が遅れる可能性もあるため早めに作成を行っておかなければなりません。

また下請けに仕事を依頼する場合、下請け業者や現場監督などが施工計画書を作成することもありますが、法律的には主任技術者及び監理技術者の義務であるため、必ず主任技術者や監理技術者がその内容を確認する必要があります。施工計画書を作成したのち自治体担当者などに提出をする必要があります。
自治体によっては書式などが決まっていることもあるため、手順としては、

1.提出先に書式の有無や必要項目などを確認する
2.書式や必要項目に合わせて該当する内容を調べ、施工計画書を作成
3.主任技術者監理技術者が作成したのでなければ、該当の担当者に確認
4.自治体担当者へ提出

という流れになります。そして承諾をもらってから着工ということを考えると、実際に施工を行うよりもはるか前から施工計画書の作成をする必要があります。



施工計画書の必要項目

施工計画書は作成する企業、または提出する自治体などによって書式が異なります。当然書式が異なれば内容や項目も異なりますが、一般的に必須である項目を挙げていきます。

1.工事概要
行う工事の名称、内容、場所、請負金額など概要を記載します。

2.計画工程表
工事を行う際の施工の順序や工種、またその工種ごとの施工期間などを記載します。

3.現場組織表
現場で実際に業務にあたる人がどのような組織関係にあり、どのような業務を担当しているかを記載します。

4.指定機械(主に土木工事の場合)
建設に使用する機械のうち、設計図書で指定した機械についての詳細を記載する。記載内容は機械の名称、規格、使用する台数です。

5.主要船舶・機械(主に土木工事の場合)
4の指定機械以外で工事に使用する船舶・機械について記載する。記載内容は指定機械と同じように機械の名称、規格、使用する台数です。

6.主要資材
工事で使用する資材のうち主要な資材について記載する。資材についての記載内容は品名、規格、数量などです。

7.施工方法
施工の方法を計画工程表よりもより詳細に記載します。記載内容は主要な工種の施工方法と順序です。

8.施工管理計画
施工管理計画では、出来形や品質、工程など工事にあたっての管理方法を記載します。具体的な方法が分かるように図表などを使用することもあります。

9.安全管理
安全管理をするための組織や点検整備などを行う方法を記載します。その内容を工事を行う関係者が共有することで工事中の事故を防止します。

10.緊急時の体制及び対応
工事を行っている期間中に、地震や台風が発生したときの対応方法や資材や設備などを安全に現場で確保するための方法を記載します。またそうした緊急時の連絡方法や万が一事故が発生したときの連絡の詳細などもここにまとめます。

11.交通整理
工事を行う際の交通に関する項目です。施工時の周辺への交通の影響の対策や交通の規制方法についての詳細。また資材や機材の運搬を行う際の積載などについても記載する。

12.環境対策
施工時の周辺への騒音や粉じん、振動などの対策方法を記載する。想定される公害の度合いやそれについての対策の詳細を記入する。

13.現場作業環境の整備
実際に作業を行なう際の、現場や事務所などの環境に関することを記載する。工事場所が高温になる場所であればその気温への対処を具体的に記載する。

もちろんこれだけの項目を記載するだけでなく、その工事の内容や施工の際に環境や安全などさまざまな面で求められるものがあります。施工計画書は一概にこれだけ書けばよいというものではなく、実際に施工するにあたって、作業員と監督者元請職員全員が共有し行っていく内容については、その都度追加して記載していく必要があります。



実際に施工計画書を書くにあたって気を付けること

施行計画書は実際に工事を施工するにあたっての詳細について記載した書類です。そのためその内容は施工を行う人全員に周知され実際に工事を行う際にはその内容が順守されることになります。

もちろん施工計画書の作成は安全管理や成果物の品質保証をするために作成するものですので、安全を確実に確保できるようまた成果物を確実に作れるよう記載するべきです。しかしその内容があまりに実際に施工を行う際に負担のかかる内容であると、現場で予定以上に時間がかかり工期が伸びてしまったり、また予定の人数の作業員では作業を行なうことが難しくなってしまったりという可能性があります。

あまりに高すぎる内容を記載しないことがあります。施工計画書は工事を行ううえでの作業内容や成果物の最低基準を示したものになります。そのため工事内容や成果物は少なくとも記載内容よりも優れたものが要求されます。発注者としてはその内容以上のものが確実に完成することを想定しているため、実際の作業内容や成果物がそれを少しでも下回った場合厳しい評価を受けることもあります。

特に継続して依頼を受ける可能性のある自治体などからの公共工事の場合、施工計画書の内容がきちんと守れなければ次回以降の公募の際に受注が難しくなることもあり得ます。
施工計画書を作成する際にはバランスを考えて、現実的に可能な内容であるかということを念頭に置いたうえで質の高い内容を記載する必要があるのです。

単純に提出する書類と考えるのではなく、工事に関わるだれが読んでもその工事の内容が把握できる記述の仕方をすることも重要です。 行う内容を記述する際に、だれがそれを行うのか、またどのように行うのか、という詳細が明記されていなければ実際にその内容を順守することが難しくなります。確実に施工の内容と成果物の品質を保つためにも明確に「どのタイミングで」「どの頻度で」「だれが」「何を行う」ということをはっきりさせておく必要があります。



施工計画書の作成の具体的な流れ

具体的に施工計画書を作るにあたってどのように進めていくとスムーズに進むでしょうか。先に全体の流れに関してはまとめましたが、ここではより具体的な施工計画書の作成手順をまとめていきます。

1.工事全体を把握する
施工計画書の内容として記載するものとして、工程や工法、安全管理や周辺環境への配慮などがあります。
まずはそうした項目を考慮するまえに、その工事がどのような目的で何をするためのものなのか、そして施工現場はどのような環境なのかということを把握しなければ施工計画書の作成はできません。そのためまず作成にあたっては関連文書などを確認し、工事の全体を把握することが必要です。また現場に足を運びその環境を実際に細かく分析する必要があります。周辺に建築物がある場合にはその建築物やそこに居住している人への影響、また施工期間中の工事車両による周辺の交通に対する影響なども考慮し、その対策を考える必要があります。

2.工事そのものについて発注者と話し合う
施工計画書は工事中の安全や施行内容を規定するだけのものではなく、施工した工事の成果物を保証するものでもあります。そのため完成する成果物は施工計画書に書かれているものに限りなく近いものが予想されます。完成した成果物と発注者のイメージにずれがないようにするために、施工計画書を作成する前の段階で発注者と何度も話し合いを行ってそのずれを極力なくすために話し合いをしておく必要があります。
またその過程で相互に疑問や懸念が発生することもあるでしょう。そうした不安要素は施工を開始する前の段階で極力詰めておくことによってトラブルを前もって避けることができます。

3.実際に施工計画書を作成する
全体の施工内容、現場の状況、そして発注者の意図やイメージなどをきちんと把握することができたら実際に施工計画書を作成します。
作成にあたっては必要な項目の再確認が必要です。また無から書類を作成することは難しいためできれば同じ種類の工事の書類の雛形を用意します。全体の項目の確認をすると同時に前段階までに調べた内容で必要のある項目を追加していきます。もちろん同じ種類の工事とはいえその現場や工事の目的によって、必要な項目は増減します。実際に工事を行うときにどのようなトラブルやリスク発生するかをよく想定し項目を追加していく必要があります。



施工計画書は工事全体のできや評価を大きく左右するもの

施工計画書は工事全体を統括する書類です。その書類の内容によって成果物や工事そのもののできを大きく左右するといっても過言ではありません。その一方で施工計画書は施工を行う前に完成・提出を求められるため、手戻りなどでその作成が遅れてしまえばその分工事開始の時期や工期が遅れることになってしまうものでもあります。工事開始時期や工期が遅れてしまえば関連している業者だけでなく依頼者にも非常に大きな迷惑をかけることにもなりかねません。
手戻りは、重要項目が抜けているなど明らかにその施工計画書に足りない項目があるということや明らかに依頼主のイメージするものと違う完成イメージになるということによって発生します。施工計画書の手戻りが発生してしまうと再作成に時間がかかってしまうだけでなく、工事そのもののタイミングが遅れる可能性もあります。
一方で手戻りすることを恐れて施工計画書を実際に想定しているよりも遥かに高い内容を記入してしまうとその内容を実現することができなかったり、また現場に非常に負担をかけてしまったりということになる場合もあります。
工事全体を現実的に考慮し実現可能な範囲でかつ発注者を納得させるだけの内容が含まれた施工計画書を作成することが、打ち合わせも含めた施工全体を円滑に進めかつ迅速に施工計画書を作成することができる方法なのです。




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